家庭菜園を始めて食の安全のことを考えた話|グリホサートは日本でなぜ普通に売られているの?

家庭菜園をはじめて、雑草取りをすることが増えました。

雑草は、こちらの都合などおかまいなしに生えてきます。
昨日抜いたはずなのに――。
そう思いながらしゃがみこんで、土を払い、指先で一本ずつ抜いていると、ふと思うのです。

これを、手間なしで枯らす薬があるのだ、と。

まけば、草は枯れる。
暑い日も、蚊に刺される日も、腰をさすりながら草を抜かなくてもいい。
便利だろうなあと思います。

けれど、その便利さの向こう側にあるものは、何なのでしょう。

すると、思い出したのです。
そう、あの時も「食と農」がテーマでした。

農家さんがこっそり教えてくれたのです。

「キレイな野菜を作るために、薬、蒔くよ。そうしないと誰も買わないからね。でもうちの家族が食べる野菜には、薬、使わない」と。

私は地方局のニュースキャスターを務めてから、ちょっとした社会問題をテーマにしたシンポジウムなどのコーディネーターやパネリストをよく担っていたのです。

家庭菜園をはじめたら、「食の安全」の奥が見たくなりました。

 

【筆者:やまべちかこ】
人材育成コンサルタント・カウンセラー。
職場の課題から家庭の人間関係まで、長年にわたり多くの方の悩みに向き合ってきたシニアです。詳細はクリックしてください。
筆者自身の経験として、経済的に苦しかった時期や、地方での暮らし、ステップファミリーでの家族再構築、介護などを通して、「人生をどう整え直していくか」を考え続けてきました。

女性ネットワークの立ち上げと運営、地方のテレビやラジオ出演などを通じて、さまざまな立場の方の声も聞いてきました。

本ブログ「私のストーリー」では、人生の途中で見つけた気づきや、遠回りの中で拾った小さな希望を綴っています。

 

家庭菜園を始めたら、食の安全が気になり始めた

わが家で家庭菜園を始めたのは、難しい問題意識からではありません。

孫に、キュウリやトマトを食べさせたい。
スーパーで買ってきた野菜ではなく、水をやると育って、実がなって、収穫するところを見せてやりたい。
ただ、それだけでした。

畑と呼ぶには少し気恥ずかしい、小さな場所です。
キュウリ、トマト、ルッコラ、バジル。

「今日はキュウリが一本採れた」
「トマトが赤くなってきた」
「バジルの香りがいいね」
そんなことを、シニア夫婦でのぞきこんで喜んでいます。

けれど、孫に食べさせると思うと、自然に気持ちが傾くのです。
農薬も、除草剤も、防虫剤も、できれば使いたくない。

特別に自然派を目指しているわけではありません。
ただ、目の前に孫の顔が浮かぶだけ。

家庭菜園と食の安全は、思っていた以上にひと続きの問題でした。

 

ラウンドアップとグリホサートの話は、ただの噂なのか

家庭菜園を始める前から、名前だけは聞いたことがありました。

「ラウンドアップは危険なのではないか」
「グリホサートは海外で問題になっている」
「日本では普通に売られている」
そんな話です。

正直に言えば、以前の私には少し遠い話だったかもしれません。
自然派の人たちの話。反農薬の人たちの話。少し陰謀論めいた話。
そんなふうにとらえていたところもなかったと言えません。

けれど、調べてみると、これは単なる噂話として片づけられる話ではなかったのです。

グリホサートは、世界中で広く使われてきた除草剤の成分です。
一方で、発がん性をめぐる評価や、各国での規制、訴訟、残留基準の見直しなど、長く議論の対象にもなってきました。
もちろん今もです。
グリホサートが主成分のラウンドアップについては、安全性をめぐる議論が海外でも長く注目されています。

つまり、話は単純ではなかったのです。
「絶対に危険」と叫べば済む話でもない。
「国が認めているから大丈夫」と言い切れば済む話でもない。
そこに、私のモヤモヤが深まっていきました。

 

グリホサートは日本でどう扱われているのか。海外との違い

グリホサートについては、
「海外では禁止や制限が広がっているのに、日本では一部の基準がゆるめられ、世界と逆行しているかのように見える」という指摘があります。

たしかに、海外では使用を制限する国や自治体が増えました。
訴訟も起きています。
健康への影響を不安視する声もあります。
とはいえ、EU全体で全面禁止されているわけではありません。
条件や制限をつけたうえで、承認は更新されています。

だから、ここは正確に言えば、「世界では禁止、日本だけが解禁」と単純に言い切るのは難しいのだと思います。

ただ、海外でこれほど議論され、規制の動きも出ている成分が、日本ではホームセンターでごく普通に並んでいる。
そのことには、やはり違和感を覚えます。

「よく効く」
「手軽」
「根まで枯らす」

そんな言葉とともに、日用品のように売られています。
グリホサートは、家庭用だけでなく、農業の現場でも雑草管理のために使われてきた除草剤成分です。

グリホサートが、なぜ日本では、こんなにも「安全」なイメージになっているのか、その理由は何か、その辺りをもう少し情報はないかと探してしまいました。

 

補足:グリホサートの残留基準について
詳しくは、ここをクリックしてご確認ください。厚生労働省のPDFへのURLも貼っています。
厚生労働省の平成29年12月25日付通知
「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」には、グリホサートの残留基準値について、作物ごとの「改正後/改正前」が示されています。たとえば、次のように以前より高い基準が設定されたものがあります。

小麦:5.0 ppm → 30 ppm
ライ麦:0.2 ppm → 30 ppm
そば:0.2 ppm → 30 ppm
とうもろこし:1.0 ppm → 5 ppm
なたね:10 ppm → 30 ppm
ひまわりの種子:0.1 ppm → 40 ppm
ごまの種子:0.2 ppm → 40 ppm

詳しくは、厚生労働省のPDFをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/1225-2.pdf

問題は「農薬が悪い」ではなく、私たちがどれだけ知っているか

私は農薬を使う農家さんを責める気持ちはまったくありません。
現代の農業が、農薬なしには成り立ちにくい面があることはわかっているつもりです。

病害虫から作物を守る。安定した収穫を確保する。見た目のよい野菜や果物を、手頃な価格で届ける。
そのために、農薬が役立ってきた現実があります。

何よりも私たち消費者こそが、その恩恵を受けてきました。
だから、単純に「農薬は悪」と言って終わる話ではないと思います。

ですが、食べ物は毎日のこと。
農薬の問題は「食」の問題。
畑にまく人だけの問題ではないのです。
普通に暮らすすべての人に関わる話です。

ラウンドアップは、いわゆる除草剤です。
除草剤も農薬の一つですが、家庭用として身近に売られているため、私たちはそれを「農薬」として意識しにくいのかもしれません。

だからこそ、もう少し知りたい。
何が使われているのか。どのくらい残り、どんな影響があるのか。

農薬の残留基準は、何を根拠に決められているのか。
海外で問題になった理由は何なのか。
企業の説明と、消費者の不安の間には、どんなずれがあるのか。
「基準内だから大丈夫です」
その一言で終わらせるには、食べ物はあまりにも身近です。

 

農薬の残留基準が変わるとき、暮らしの側には疑問が残る

日本でも、食品に残ってよい農薬の量には残留基準があります。
基準があるからこそ、食品の安全は管理されている。
それは制度として必要なことでしょう。

ただ、一般の消費者として戸惑うのは、グリホサートに関する基準が見直されたことです。
昨日までの基準と、今日からの基準が変わった。
なぜなのでしょう。
専門家の審査を経たうえでの改正だという説明もあるでしょう。

けれど、暮らしの側から見ると、素朴な疑問が残ります。
一部の食品では、「それまでより多く残っていてもよい基準になった」ものがある。
なぜ? なぜなのでしょう。

安全性がより確かになったからなのか。
流通や輸入の現実に合わせた面があるのか。
そのあたりが、私にはさっぱりわかりません。

もちろん、基準が変わったからといって、すぐに危険だと決めつけることはできません。
けれど、消費者としては、もう少しわかる言葉で説明してほしい。
そう思うのは、自然なことではないでしょうか。

 

小さな畑から見えた、食の安全という大きな問い

今日もまた、畑のすみに雑草が伸びています。
しゃがみこんで一本ずつ抜いていると、腰は痛いし、蚊にも刺されます。
手の爪には土が入り、決してきれいな作業ではありません。

ただ、わが家の小さな家庭菜園なら、手で抜けば済みます。
プロの農家さんに対して同じ土俵で語るつもりはありません。

でも、この小さな場所だからこそ、見えてきたものがあります。
便利さには、理由があります。
不安にも、理由があります。

そして、安心とは、何も知らないことではなく、知ろうとすることの先にあるのかもしれません。

少し曲がったキュウリ。赤くなりかけたトマト。摘むとふわっと香るバジル。
それを孫がうれしそうに食べてくれるなら、私たちの小さな畑には、それだけで十分な意味があります。

けれど、そこから見えてきた問いも、私は大切にしたいのです。
便利さは、どこから来ているのか。
安全は、誰がどう決めているのか。
そして私は、何を知ったうえで、何を選ぶのか。

家庭菜園は、思っていたよりずっと、静かで、面倒で、奥深いものでした。

 


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